作者は水谷緑さん。
かわいいイラスト、テーマは重め。
物心ついてからまだ身近な人を亡くしていない私ですが、涙涙…
泣き過ぎました。
- 死を目の前にした人にどう接したらいい?
- 大切な人が死んじゃったらどうなる?
- 大切な人を亡くした哀しみにどう向き合えばいい?
- 緩和ケアってどんなもの?
- 看護師の役割って何だろう?
このようなテーマのコミックエッセイです。
誰しも経験する大切な人との別れ。
テーマは「死」や「緩和ケア」ですが、医療関係者に限らず一般の方にも読みやすいと思います。
看護師目線で読むと「看護師ができることって一体なんだろう…」と考えさせられます。
たくさん泣いたあと心がスッキリ、明日からまた頑張ろうと思えるようなお話でした。
第一章 大切な人の死
がんになった父
作者である水谷さんのお父様が余命宣告されたところから話はスタートします。
病名はすい臓がん。
大切な人がもうすぐ死ぬ……?
いや、死なないっしょ。

エリザベス・キューブラー=ロス「死ぬ瞬間」
死を受け入れるまでのプロセス5段階だと「否定」の段階。
受容までたどり着ける人は一体どのくらいいるんだろうか…
大切な人が死んでしまうってどんな感じなんだろう?
「ご臨終です…」医師の死亡宣告とともに地球が大爆発。
そして一瞬にして全てが終わる。。
そんなイメージしかできない…。
本当に死んじゃうなんて思えない。
当たり前に生きていた人がいなくなるなんて想像できませんし、したくもないです。
あがく家族
闘病中は、余命宣告を受けながらも、最後まであきらめきれない家族のリアルな姿が描かれています。
- 自分の知り合いもガンだったけど治ったから諦めないでね!
- セカンドオピニオンは受けた方がいいのかな?
- 本当に手術はできないのか?
- 代替治療を試してみるのはどうだろうか?
たくさんの情報や周囲からの言葉かけによって揺れ動く心。
自分ももしかしたら、可能性が1ミリでもあるんだったら…
子どものために一日でも長くいきたいと思うかな。
いくら想像してみても、実際に余命わずかという状況にならなければ自分がどうなってしまうかはわかりません。
「家に帰りたい」
ストーリーの中で療養場所は「病院がいい」と話していたお父さんでしたが、残された時間が少なくなってくると「家に帰りたいです!」と訴えます。
結果的には、その願いは叶わず病院でのお看取りとなるのですが…
本人が「家に帰りたい」と言っても、「病院の方が安心でしょ?」と家族が反対すれば望みをかなえるのは難しいです。実際に自宅での療養生活を選択する場合には本人、家族ともにそれなりの覚悟がいります。
また、本音は「家に帰りたい」だとしても、「家族に迷惑かけたくないから…」という理由で「最期まで病院」を選択したり…
それぞれの想いは複雑です。
「在宅医療なんて知らないし、できるイメージもなかった。」
「でももし、知っていたら叶えられていたかもしれない。」p31
「大切な人が死んでしまうかもしれない」
そんな状況で情報収集するのってものすごく大変。
「在宅医療について何?」という知識ゼロの状態であれば、最後の療養場所として「家」という選択肢は出てこないかもしれません。
たくさんの人に在宅医療について知ってもらいたい。
そして、在宅での療養を希望する人にとって安心して自宅で生活できるサポート体制が整うといいな…
ふと、そんなことを考えてしまうシーンでした。
残った後悔どうしたらいい?
なんとなく、どう考えればいいのか道筋が見えたような気がする瞬間もあるけれど、
ふとした瞬間に始まるループ。
日常の偶然をなんでも父とこじつけた
でも父の部屋のいつまでも8月のカレンダーと雑草のボーボーの荒れた庭を見て
「ああ 死んだんだ」と思った
「悲しみ」は波のよう猛烈に押し寄せたと思っても引いていくそのくりかえし
時間とともにその間隔が開いていく「死」は乗り越えるものでなくなれるもの
「死ぬ」ということはただ「絶対に会えない」ということだった p43
割りと早く立ち直れる人。
歳月をかけてゆっくりゆっくり立ち直れる人。
うつ病になってしまう人。
違いは何でしょうか?
大切な人が治らないとわかったとき、どうすればいいのかな
「死ぬ」ってどういうことなのかな p48
父の死からなかなか立ち直れない水谷さんは緩和ケアナースに話を聞きにいきます。
2章へ続く…
第2章 死を目の前にした人たち
緩和ケアナースの仕事って何?

第2章では、緩和ケア病棟に入院している患者さん緩和ケアナースの関わりについて描かれています。
お看取りの場面では亡くなっていく人を支えるのももちろんですが、看取る側の家族を支えるのも看護師の大切な仕事ですよね。
お看取りの場面では患者さんのケアというより、家族のケアにより意識を向けているきがします。
家族はそのあとも生きていくわけですから。
亡くなっていく過程を見届けることは
逝く人と遺る人
最後の関係をつくっていくこと p59
残された家族の人生は続いていく
患者さんがなくなっていく過程はその後の家族の生活や死生観に大きくかかわる p63
緩和ケア病棟 患者さんとのエピソード
- ステージ4の肺がんを告知された女性の否定・怒りから治療へ
- 感情を出すのが苦手な患者さん
- 家族のために抗がん剤治療を最後まで治療を続けた患者さん
- 30代でステージ4のすい臓がんと告知された幼い子供をもつママ
- 「自分の命はここでいい」ときめた3歳の子
- 緩和ケアナースの木下さんが自分の父親を肺がんで亡くしたエピソード
残された時間、どう考え、どう過ごすか?
悩み苦しみながらも、それぞれの最期の時間を過ごす患者とそれに向き合う看護師の姿が描かれています。
看護師として働き続けるための心得は「他人事でいい」
看護師はたくさんの人の死と向き合っていかなければいけません。
毎回落ち込んでいたら、心がいくつあってもたりないし、看護師を続けるのが苦しくなってしまいますね。
患者さん、ご家族の気持ちに寄り添えば寄り添うほど、心のバランスを保つのが難しくなります。
「他人の悲しみはわからない」ことを前提にするのは誠実だと思う
他人事でいいと考えるようになってから楽になったの
私がやることは安心して悲しめる場をつくることだと思ってる p106
少し冷たく感じるかもしれませんが、決して無関係、無関心というわけではなく、心のバランスを保つためには必要な考え方ではないでしょうか。
エピローグ
あのときなんて言えばよかったんだろう?
死を目の前にした人に周りの人は何ができるんだろう…
死ぬのが怖くなってきたといわれたら。
あなたはどうしますか?
わたしも水谷さんと同じように、ただうなずくだけでなにも言えないかもしれません。
弱音を吐かせてほしい。
ただそばにいてほしい。
手を握っていてほしい。
答えはわかりませんが、そばにただいるだけでいいのかも…。
この作品は亡くなったお父さんに向けて手紙を書いているシーンで終わります。
はじめは質問ばかりでしたが、時間がたつにつれてだんだんと感謝の言葉に代わっていったお父さん宛ての手紙。
「書き終わると小さな達成感があった」と描いています。
哀しみを癒す「ありがとう」の手紙
YouTube精神科医・樺沢紫苑さんの樺チャンネルという番組の中で
「大切な人がなくなった時の対処法」で
「悲しい気持ちを中和するためには感謝することが一番効果的」
書く・話すなどとにかくアウトプットする。
アウトプットの中でも一番効果的なのは
亡くなった人に向けて感謝の手紙を書くこと」
と話されていました。
悲しみ(哀しみ)を癒すには「ありがとう」という感謝の気持ちが一番なんですね。
そういえば・・・
わたしも幼少期にかわいがっていたニワトリが死んでしまった時、手紙を書きました。
「ポッポありがとう。大好きだよ、また一緒に遊ぼうね。」
だれに習ったわけでもなく、自分を癒すために自然と書いてたんでしょうかね…
まとめ

読み終わった後ほっと心が温かくなる素敵な作品でした。
看護師としても、余命を告げられた患者さんとその家族の心の動きを知ることができましたし、看護師の役割について改めて考えるきっかけにもなりました。
この漫画を描かれた水谷緑さんは他にも「こころのナース 夜野さん」「精神科ナースになったわけ」などたくさんの作品を描かれています。
気になった方は是非読んでみてくださいね。
でわでわ!