利用者さんの自宅にお邪魔してサービスを提供する訪問看護。
生活の場である自宅でのケアは、病院で働く看護師とはまた違ったマナーの知識が必要です。
利用者さん、ご家族からの信頼を得るための第一歩「訪問時に注意したい基本的なマナー【挨拶・身だしなみ・振る舞い方】について」確認しておきましょう。
こんな方にオススメです↓
■訪問看護師ってどんなマナーに気をつけるべきなのか知りたい方
■訪問看護師になったばかりで、自分の振る舞い方って大丈夫?と心配な方
■日ごろ行っている訪問看護の接遇マナーを振り返りたい方
今回学んでいく内容をしっかり押さえて、利用者さん、ご家族から信頼される訪問看護師を目指しましょう!

入室前・入室時のマナー
出発前に情報収集、必要物品の確認
前回、別のスタッフが訪問していれば、実施記録を確認し、情報が不足していれば担当スタッフから話を聞きます。ケア方法の変更がないか?確認してくることはないか?情報をとっておきましょう。
情報伝達がうまくいかずに「この前の看護師さんに話したんだけど、聞いてないの?」なんてことになるとかなり気まずいですし、信頼を失ってしまう可能性もあります。
抜けがないように確認していきましょう。
必要物品の忘れ物は致命的です。場合によっては予定していた看護ケアが実施できなくなってしまいます。取りに戻るにしても、訪問時間には遅刻、焦って事故なんて起こしたら大変です。
事務所を出発する前に「忘れ物はない?」と自分自身に問いかけてみましょう。
車は決められた場所に駐車する
駐車場は必ず指定された場所を利用します。(駐車許可書が必要場合は必ずダッシュボードの上に提示することをお忘れなく)
とはいえ、いつもの駐車場に別の車が停まっていて、利用できないということはよく発生します。
やむを得ず別の場所に駐車する場合は、トラブルを避けるために必ず利用者さんやご家族に確認してから、駐車するようにしましょう。
訪問看護サービスを利用についてご近所に知られたくないという利用者さんもいます。車名の入っていない訪問車を使用するなど配慮が必要な場合もありますので気を付けましょう。
時間は厳守!遅刻も早すぎるのもNG
利用者さん、ご家族にとって楽しみでればうれしいですが「他人が家に来る」というのは少なからず緊張するものです。
「訪問時間に合わせて掃除や整理整頓を済ませるようにしてるから、訪問の日は朝から大忙しよ!」というご家族もいます。準備万端で待っているのに、約束の時間に来なければイライラしますよね。
訪問時間については、ビジネスでは約束の時間5分前がベストと言われたり、個人宅への訪問は迎える側の準備等であわただしいという理由で、約束時間より少し遅れ目(3~5分後)に伺うのがマナーという意見もあります。
私はぴったり、もしくは5分後までに入室。10分以上遅刻する場合は事前に連絡をいれるようにしています。
利用者さんの中には電話に出るのが大変(移動に時間がかかる)だからという理由で、人によっては「5分10分遅れるくらいなら電話しなくていいよー」という方もいますので、そのあたりは臨機応変に対応しましょう^^電話で遅刻の連絡を入れたくても、電話にそもそも出ない、出られない、出ても聞こえない(難聴)方も多いので、なるべく時間通りにうかがえるように計画的に動いていきましょう!
トイレは済ませておく
「訪問先でトイレは借りない」が原則です。
事務所を出る前に必ずトイレを済ませてから出発。
出先でトイレに行きたくなったら、コンビニなどで済ませてから訪問先へ向かいましょう。
呼び鈴で焦らせない
応答に時間がかかる場合もありますので、立て続けに呼び鈴を鳴らすことは避けましょう。焦って転倒してしまったなんてことがあったら大変です。
しばらくたって応答がなければ再度呼び鈴を鳴らします。
訪問時間に合わせて鍵を開けて下さっている場合も多いですが、施錠されている場合、鍵を開けてもらうまで(玄関までの移動)時間がかかることがありますのでドアノブをガチャガチャ動かさないようにしましょう。
上着は玄関先で脱ぐ
外のチリやほこりを室内に持ち込まないように、玄関先で上着を脱いで外面を内側にして畳み、まとめてから入室します。玄関先に置かせてもらうのも一つですが、忘れないように気を付けましょう。
雨の日対策はしっかりと
訪問先によっては、駐車場から自宅までの距離が離れているなど、雨の中を大きな訪問バックを持って徒歩で移動する場合もあります。
長靴を履くのはちょっと大げさかな?というときも防水加工のレインシューズなら気軽に着用できるのでオススメです。
靴下が湿ってしまい、自宅に上がると足跡がくっきり!なんてことがありますから、タオル、替えの靴下は常に携帯するのがオススメです。
くつの脱ぎ方
玄関から入った向きのまま靴を脱ぎ、一度家に上がってから体の向きを変え、靴をそろえるのが正しいマナーです。脱いだ靴のつま先を玄関の方へ向けて揃えましょう。振り返るときは完全に背中を向けるのではなく、斜めに向いて膝をつくとGOOD!
玄関にも上座、下座があります。
①げた箱の上に何か飾ってある場合→(げた箱側が上座)下駄箱と反対の端に寄せてそろえる
②何も飾られていない場合→(げた箱側が下座)下駄箱側に寄せてそえろえる
このようなことを頭におきつつ、邪魔にならないようにそろえておけばOKです。
スリッパ・靴下カバー
スリッパは勧められたら履きましょう。
不衛生など環境に問題があるご家庭では、スリッパやシューズカバーなどを使用します。
あからさまに目の前でシューズカバーの着脱行うのは「うちが汚いってこと?」と不快に思われる可能性がありますので、着脱のタイミングには配慮が必要です。
ご家庭によっては「他の家に上がった靴下で上がってほしくない」という場合もあるかもしれませんね。そういった場合にはあえて、お宅へ上がる際に目の前で「カバーをかえさせていただきますね」と綺麗なシューズカバーをつけるという方法もアリかもしれません。
身だしなみ
身だしなみはマナーの基本です。
好感を持てる訪問看護師を目指しましょう!
清潔感のある服装で
指定のユニホームがない場合もあると思いますが、その場合も清潔感ある服装を心がけましょう。ポロシャツの場合は一番上までボタンをとめましょう。
ジーンズはNGです。
靴下も意外にみられてます。穴が開いていないか、足裏がすれて薄くなっていないか?定期的にチェックしましょう。アレルギーのある方もいらっしゃいます。ペットの毛やほこりなどが除去してから訪問しましょう.
⇒訪問看護師のユニフォーム事情。どんな服装?選び方のポイントは?
アクセサリーや時計は最低限に
ケアの時に利用者さんを傷つけてしまう可能性もありますし、衛生面も考えて、必要最低限の着用にしましょう。
時間を見ながらケアをすすめることが多いので腕時計はあった方が便利なのですが、腕に着けているとなにかと邪魔になります。
私は腕時計は付けずに訪問バックにぶら下げて、呼吸数を数えたり、残り時間の確認などの際に見られるようにしています。
忘れがちですが、首にかけた名札、胸ポケットにさしたペンなどはケアの際に利用者さんを傷つけてしまう可能性があるのでケア中は外すようにしましょう。
髪の毛
ヘアケアしてますか?髪型は清潔感がありますか?
利用者さんと近距離で関わることが多い訪問看護。
髪の毛のフケやニオイは結構気になりますよね。
また、ケアの時に顔にかかって邪魔になり、何度もかき上げたりしていませんか?
どこかにふれた手で、髪を触るのはできれば衛生面を考えても避けた方がいいでしょう。
ケアに集中するためにも、ヘアスタイルには気を配りたいですね。
訪問バック、靴
訪問バックはくたびれていませんか?
靴は汚れていませんか?
靴はかかとを踏ますに着用しましょう。
手のケア
触れた時にガサガサして痛い。触れるとヒヤッと冷たい。
特に冬場は手のケアをしっかりしておきたいですね。
私も冷え性なので冬場の手は氷のように冷たいです。
- 手袋をつける
- ホッカイロで温めておく
- 手洗いの時にお湯で手を温める
このような方法でなんとか対応しています。
ニオイもエチケットの一つ
他人のニオイはとても気になるものです。
自宅というプライベートな空間に入ってくるならなおさら。
自分にとってはここちよい香りでも、相手がどのようにとらえるかはわかりません。
病気や治療によってはニオイに非常に敏感になっており、場合によっては吐き気を催すこともあります。口臭や体臭のケアはもちろんですが、制汗スプレーや柔軟剤の香りなどにも注意しましょう。
挨拶・言葉遣い

自己紹介の挨拶ははっきりと
しっかりと視線を合わせて、ゆっくり、はっきりと挨拶します。
名刺は両手で差し出し「OO訪問看護ステーションから参りました。看護師のOOです。どうぞよろしくお願いいたします」というように挨拶をします。
名刺を受け取れない場合もありますから、そういった場合には「こちらに置かせていただきますね」「ご家族にお渡ししておきますね」と伝えましょう。
言葉遣いは敬語で
付き合いが長くなると、だんだんとなれなれしい言葉遣いやくだけた表現をしてしまいがちですよね。
ある程度関係性が築けてくると、常に敬語というのもよそよそしい感じだし…その気持よーくわかります。
私も実際には「そうよねー。それは大変ですよね。」「うんうん、そっか。じゃあ先生にお伝えしておきますね」というように、自分の中で解釈する部分は敬語でない場合が割と多いです。
もちろん利用者さん、ご家族のキャラクターによって話し方は変えていますが…
家族のような親しみを感じてしまう場合も多いですが、私たちは訪問看護サービス提供者であり、利用者さん、ご家族はお客様。
節度ある関わりが必要です。
呼び方に注意
利用者さんが男性の場合、奥様を「おかあさん」、女性の場合はご主人を「おとうさん」と呼んでいるご家庭も多いですね。
この呼び方になんとなく引っ張られて、我々も同じ呼び方になることがあります。
呼び方によっては相手に不快感を与えてしまっているかもしれません。

早めに指摘してくださればいいのですが、内心よく思っていなくても我慢してしまう方もいらっしゃいます。
例えば…
花畑薫子さん(旧姓:小川)の場合
- とくに気にしない(奥様、おかあさん、OOさん、なんでもいいよ)
- 名前で呼んでほしい(薫子さん)
- 名字で呼んでほしい(花畑さん)
- 旧姓で呼んでほしい(小川さん)
- 愛称で呼んでほしい(るこさん、花さん)
- 特殊なケース(花畑先生、花畑師長、花畑部長)一番輝いていた時の職業、役職とか
その方に合わせて呼び方を変える場合もあります。
基本的には奥様、ご主人様、娘様、長男様といった呼び方でOKだと思いますが、特別な配慮が必要そうな場合には「どのようにお呼びしたらよろしいですか」とはじめに確認するのがよいでしょう。
入室~ケア中の振る舞い方
室内も上座、下座に気を付けて
普段の訪問ではあまり気にすることはないと思いますが、契約時など改まってお話しする時には、上座、下座にも気をつけましょう。
基本的には入り口に近い方が下座です。
ご家族から案内があった場合には指定された場所に座るようにします。
上座、下座の説明はこちらを参考にどうぞ↓
https://www.seikatu-cb.com/manner/jouza.html
バックは床に置く
バックは椅子やテーブルに置かずに床に置きます。
仏壇の前には荷物は置かないようにしましょう。
なんでも一言声ををかける
訪問看護では自宅にあるものを使わせて頂くことがほとんどです。
手を洗う場合も「洗面所をおかりしてよろしいですか?」
まとめたごみを置くときも「ごみはこちらでいいですか?」
ティッシュ一枚でもなんでも、一言声をかけてから使うようにしています。
訪問先では原則飲食はしない
現在は新型コロナウイルス感染の問題もあり、私の勤務先では訪問先での飲食は一切禁止となっています。
しかし、以前はケアの最後にはお茶を出してくださるご家庭も多かったです。中にはこのお茶の時間を楽しみにされている方もいて、なかなか断りづらい場面も実際にはあるんですよね…
なにがなんでも断る!というわけではなく時には柔軟に対応することも必要です。(新型コロナウイルスの問題があるので、今は別ですが。)
訪問先で飲食は禁止されていることを契約時にしっかりと説明しておくことが大切です。
それでもお茶を提供されて、お断りが必要な場合にも相手が不快に感じないような伝え方にしましょう。
きょろきょろしない
家の中をきょろきょろ見回すのはマナー違反。
ケアに関係のない場所へは立ち入りはNGです。
情報収集、アセスメントのために室内の環境チェックは理由を説明して確認させて頂くか、さりげなくしましょうね。
和室の部屋は気を付けて
和室の部屋では敷居や畳のヘリはは踏まないように気を付けましょう。
座布団を用意して下さった場合は、勧められてから座布団に座るようにします。
使ったものは元に戻す
使用した物品は訪問前の状態に戻してから退出するのが原則です。
ご家庭によっては「あとは片付けるので、そこに置いておいて下さい」と言われる場合があります。ご家族に負担をかけないように片付けまで実施するのが望ましいですが、入ってほしくない場所、触ってほしくないものなどもあるでしょうから、臨機応変に対応しましょう。
ご家族にも挨拶を忘れずに
ご家庭によっては、ケア中は席を外して別室で過ごされている場合もあります。
退出する前に、ご家族にも必ず声をかけましょう。ケアが終了したことを伝え、最後に「これで失礼いたします」と挨拶を忘れずに。
ドアは静かにしめる
退出の挨拶まではバッチリだったのに、最後の最後で「バタン!!」と勢いよくドアを閉めてしまったら一気に印象が悪くなってしまいます。
最後の印象は強く残りますから、最後まで気を抜かずにいきましょう.
上着は外で着る
外で上着を脱いだのと同様に、退出時もドアを出てから上着を羽織るようにしましょう。
忘れ物をしない
退出前に今一度、忘れ物がないかチェックしましょう。
忘れ物をしてしまうと、物によっては(必ず使用するバイタルセットの一部など)その後の訪問に支障が出る可能性がありますし、取りに戻るにも時間がかかります。
靴は中央に移動させてから履く
靴を履くときは端に寄せた靴を中央に移動させてから履きましょう。
かかとは踏まずにしっかり靴を履いてから歩き出しましょう。
退出~訪問後
会話に注意する

利用者さんのプライバシー保護はマナー以前のルールです。
スタッフ同士、食事に行ってついつい利用者さんの話をしてしまったり、事務所の駐車場で情報交換をする場合もあるかもしれませんが、プライバシーに配慮して話の内容、声の大きさには十分注意しましょう。
まとめ
今回は、訪問看護師として働く上で基本中の基本ともいえる「訪問時のマナー」についてお話してきました。
【看護ケアを提供する者としてのマナー】+【お宅にお邪魔するときのマナー】だね!
マナーや接遇は訪問看護師として働く上で重要なスキルの一つです。
マナーに気をつけて気持ちのいいサービスを提供できるように頑張っていきましょう!