訪問看護ステーションの数、訪問看護利用者数は年々増加しており、今後も増加していくことが予測されます。
次々に新しい訪問看護ステーションが誕生する中、経営がうまくいかず、廃業に追いやられるステーションも多いのも事実。
令和元年度中に新規設立された訪問看護ステーションが全国で1376か所ある中で
廃止数が526か所 休止数が238か所となっています。
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/r2-research.pdf
新たに設立されたステーションの約半数は廃業してしまうという厳しい現実…
就職するステーション選びを間違えてしまうと、オンコール担当が管理者と自分しかいない!なんて過酷な状況に陥ってしまうかもしれません。

今回の記事では、
・訪問看護にチャレンジしてみたい…
・どういう基準で訪問看護ステーションを選んだらいいの?
という方に向けて、訪問看護ステーション選びに失敗しないための9つのポイントをまとめました!
それでは、ひとつずつ見ていきましょう!
①オンコール当番(待機)について確認しよう
ほとんどの訪問看護ステーションは、利用者さんの体調変化などに備えて、24時間緊急対応をしています。
パート勤務であれば、オンコールは免除される場合が多いと思いますが、常勤で働く場合には、月に数回、オンコール担当として待機の電話を持つことになるでしょう。
オンコール当番についてチェックしておきたい項目
■一か月に何日くらい担当するの?
■緊急の電話はどのくらいかかってくるの?
■実際に出動する頻度はどのくらい?
■一人制?二人制?
ステーションの常勤スタッフ数で一か月あたりオンコール待機回数が予想できます。
常勤スタッフ 10人→30日÷10人=3日
私の勤務先は大体このくらい。
一人が3日連続で担当します。
夜間に出動して睡眠が十分にとれなくても、朝は通常通り出勤します。
勤務調整がつけば、午後から代休をもらえることもあります。
電話が鳴るのは、緊急事態だけではなく、キャンセルの連絡であったり、ケアマネさんからの事務連絡であることも。

待機の時に呼ばれるかどうかは、その時に状態が不安定な利用者さんがいるかどうかにもよります。
病院でステルベンや緊急入院によくあたるナースがいるように、この人が待機の時は電話がよく鳴るというのは「あるある」かも…
電話がたくさん鳴ったとしても、実際に緊急訪問に出動した件数はゼロということもあります。
電話口でのアドバイスで済むこともありますし、一通り気持ちを話して落ち着かれる方もいらっしゃいます。
電話が鳴るたびに訪問しなくてはいけないというわけではありませんのでご安心を…
②休日は希望通り?

病院と違って、土日休みが多い訪問看護ステーション。
子どもの学校行事などにも参加しやすい土日休みはママにとってありがたいですよね。
訪問看護ステーションは基本的に月~金曜日を営業日としているところが多いです。
(中には「月~土曜」という場合もあり)
ただ、完全にカレンダー通りに休めるかというと、必ずしもそうではありません。
褥瘡の処置や点滴処置、体調悪化など利用者さんの状況によっては、土日祝も訪問する場合があります。
③開設主体はどこ?
開設主体のいろいろ
- 医療法人
- 営利法人
- 社会福祉法人
- 社団・財団法人
- 医師会
- 看護協会
- その他(NPO法人など)

医療法人は病院やクリニックが運営
営利法人は株式会社などの企業が開設したステーションというイメージです。
営利法人では、親会社が調剤薬局をやっていたり、不動産会社やタクシー会社なんてことも。
医療以外の異業種を本業としている様々な企業が訪問看護業界に参入しているんですね。
企業経営の訪問看護ステーションが増えてきている一方、一年以内に撤退・廃業してしまうケース中にはあります。
間違ってそんなステーションに就職してしまったら、人員もギリギリ、経営もうまくいかない!で大変な思いをしてしまうかもしれませんので注意してくださいね。
開設主体によってこんな違いがある
代表的な2つの開設主体についてみていきましょう。
医療法人が運営する訪問看護ステーション
- グループ内に病院があるので経営が安定している
- 病院勤務と同等の待遇(給与、賞与、福利厚生)が受けられる
- 退院患者の受け入れやバックベットの確保がある
- 医師が身近にいるので、連携しやすく安心感がある
- 緊急時の対応も割とスムーズ
- 人員の調整が可能である
- 重症、医療依存度の高い利用者の受け入れが多い
- 利用者数、訪問回数、緊急訪問の回数が多い
- 地域ケア会議への参加等の活動を行っていることも多い
いずれは病院に戻って退院調整などにも関わりたいという方、安定志向の方、万が一訪問看護の仕事に不満があった場合のことも考えて、異動ができる可能性を残しておきたいという方には医療法人のステーションが合っているかもしれません。
営利法人(株式会社など)が運営する訪問看護ステーションの傾向
- 利益を上げることが求められる
- 給与水準は比較的高め
- 実績が給料やボーナスに反映されやすい
- 経営と現場の運営を分けて業績を伸ばしているケースもある
- 経営やマネジメントについても学べる
いずれは独立してステーションを経営してみたい、病院とは違う風土で働いてみたいという方は、企業経営のステーションにメリットを感じるかもしれませんね。
どんな法人が立ち上げたステーションなのかによってある程度の特徴はありますが、
管理者や代表の得意分野やどのようなことを大切にしてステーションを運営しているかも、ステーションの雰囲気に大きく影響してきますので、そのあたりも要チェックです!
④設立されてどのくらい?
設立されてどのくらいの期間が経っているかというのも一つの指標にしてみるのもいいかもしれません。
私は、設立10年目のステーションに就職しました。
現在は、立派な事務所があり、全スタッフが事業所の車を使って訪問に出かけています。
一人1台 携帯電話、タブレット端末の支給があり、スタッフ通しの連絡や情報共有もスムーズです。
業務マニュアルも整備されていますし、病院や関係機関に送付するFAXのテンプレートなども用意されていて、効率よく仕事ができます。
ステーションの当初は、利用さんが数人しかおらず、訪問者も自家用車を使用していたとか。
事務所もアパートの一室を利用しており、仕事中に営業回りをすることもあったそうです。
やはり、ゼロから築き上げていくというのはそれなりに苦労もあると思います。
「オープニングスタッフ募集!新しく一緒にステーションを作っていませんか?」という求人募集を時折、見かけます。
意見を出し合って一からステーションを作り上げていくのは魅力的なようにも感じますが、
んー…実際は苦労も多いのではないかな…と思います。
⑤ステーションの規模
大規模(常勤10人以上 複数のステーションを運営)
- 経営が安定している
- 教育・研修体制が充実している
- 若手採用・育成にも積極的
- 休日取得に融通が利きやすい 急な休みにも対応してもらえる
- 組織が大きいため、個人の意見が反映されづらい
小規模(常勤スタッフ5人未満、ひとつのステーションのみ運営)
- スタッフ間のコミュニケーションが密で、アットホームな雰囲気がある
- 自分たちで事業所のカラーを作っていける
- 人数が少ないため、急な休みをとりづらい。休日取得の融通が利きずらい
- オンコール担当の回数などスタッフ一人の負担が大きい
⑥どんな利用者さんが多い?
- お看取りが多い
- ガン終末期が多い
- 難病の方が多い
- リハビリを必要とする人が多い
- 小児が多い
- 高齢者が多い
- 医療処置が多い
などなどステーションによって利用者さんの傾向が異なります。

自分の得意分野、興味がある分野のケアに携わることができるかどうか
利用者さんの傾向をチェックしてみるといいですね。
特化型の訪問看護ステーションもある
- リハビリ特化型
- 精神科特化型
- 重症心身障害児特化型
などなど
自分がこの分野で頑張りたいという希望があれば特化型にチャレンジするのもいいかもしれません。
⑦教育・研修の体制は?
訪問看護未経験の場合、実際のどのように利用者さんと関わればいいのか、初めは不安なことも多いですよね。
そこで気になるのが、教育・研修体制の充実度。
- 入職後、どのくらい同行してもらえる?
- プリセプターや相談役の先輩などにはついてもらえる?
- ステーション内での勉強会について
- 外部の研修について
- 研修参加費用の補助などはあるか
以前は、臨床経験を積んだベテランナースが働く職場というイメージがあった訪問看護ですが、最近では新卒ナースの採用・育成を積極的に行うステーションも出てきました。
ですが、病院のように入職時の研修(感染対策や接遇マナー、採血や点滴、吸引などの技術系)はステーションそれぞれで行うのはなかなか難しいです。
そうなると外部の研修に参加することになりますが、看護協会や病院などで研修ができるのか、参加させてもらえるのか、新卒ナース、臨床経験が浅い場合には確認しておいた方がよいでしょう。

⑧一日の訪問件数は?
給与が高めなステーションは一日の訪問件数が多い傾向にあります。
あまりにもぎゅうぎゅうに訪問予定が組まれていると、患者さんの体調変化や何かアクシデントが起きた時に調整が難しくなってしまいます。
精神的・体力的にも余裕がなくなってしんどいです。
訪問看護師は、実際に訪問してケアをする以外にも、報告書やサマリー作成、必要があれば、関係機関と情報交換をしたり、やることはたくさんあります。
私の勤務先では一日の訪問回数は最大4件です(AM2件、PM2件)
①9:30~10:30
②11:00~12:00
休憩1時間
③13:30~14:30
④15:30~16:30
こんな感じで予定が組まれています。
このスケジュールだと午後は3件目と4件目の間にまとまって時間が取れるので、事務所にいったん戻って、ケアマネさんへの連絡や医師への報告など、各々仕事をしている姿がよくみられます。
移動距離、移動時間が短い都市部では一日5、6件が多いようです。
⑨移動手段は何?
移動手段のいろいろ
- 自動車
- バイク(原付)
- 自転車
- 徒歩
例えば、運転免許証を持っていなければ、移動手段が自動車であるステーションへの就職は難しいですよね…
地方では自動車での移動が一般的ですが、都市部では自転車がメインのようです。
自動車の場合

【メリット】
- 移動が楽
- 暑い夏でもクーラー入れれば快適
- 悪天候でも割と平気
- 運転が好きな人にとっては気分転換になる
- 時間調整が楽(コンビニにとめて休憩なども可)
- 道路事情に詳しくなる
【デメリット】
- 移動範囲が広い(片道30分かかることも)
- 事故や交通違反のリスクがある(交通違反で罰金、減点される)
- 運動量が少ない
- 駐車場問題で悩むことがある
- 運転免許が必要
- 運転が苦手だとつらい
自転車、徒歩の場合

【メリット】
- 移動範囲が狭い
- 運動になる、体力がつく
- ダイエットできる
- 小回りが利く
- 素敵なお店を発見できる
- 停める場所に困ることがない(駐車場で悩む必要なし)
【デメリット】
- 悪天候の時つらい(かっぱ、長靴などが必要)
- 夏は暑く、冬寒い
- 日焼け対策が必要
- 体力的にキツイ
自転車での移動は足腰を鍛えたい方には最高ですね!
電動付き自転車が使えるステーションもあるようなのでそのあたりもチェックしてみてください。
■実際に探すときはどうしたらいいの?
自分がやりたい看護、仕事のスタイルをじっくり考えよう
まずはここから、自分がチャレンジしたいことは何か、何を大切にしたいかを明確にします。
絶対譲れない条件や多少なら妥協できるところは何か、など書き出してまとめておきましょう。
通える範囲内(自宅からOOkm以内、車でOO分以内など)にどんなステーションがあるかリサーチ!
看護協会に登録されいる訪問看護ステーション一覧からピックアップしてもいいですし、グーグルマップで検索してみるのも方法の一つです。
病院併設型の訪問看護ステーションがいいなと思っている場合には病院のホームページで訪問看護部門があるかチェックしてみてもいいですね。
候補にあがったステーションの情報を集めよう
実際働いている人がいたらその人に話が聞ければ最高ですが、なかなかそう都度よくはいきませんよね…
最近では病院や訪問看護ステーションでSNSやブログなどに力を入れているところも多くなっています。
ブログ、フェイスブックやツイッターをチェックすることで経営方針や大切にしていること、職場の雰囲気などを感じとることができるかもしれません。
スタッフ紹介などで職員の簡単なプロフィールが掲載されていることもあるので是非チェックしてみてください♪

訪問看護ステーションの情報収集に最適!介護サービス情報公開システム
インターネット上にもステーション選びに役立つ情報が公開されています。
私が実際に参考にしていたサイトがこちら↓
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
ホームページ上で、全国約21万か所の「介護サービス事業所」の情報が検索・閲覧できる
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公開システムです!
このサイトで自分が気になる訪問看護ステーションの名前を入力すると
・経営方針
・定休日、営業時間
・利用者の要介護度の分布、年代の分布
・事業所の特徴
・スタッフの男女比、経験年数、年代、常勤、非常勤の割合
・前年の採用者数、退職者数、業務に従事した年数
このような情報を閲覧することができます。
知りたい情報が見やすく整理されているので、すごく参考になりました。
私はこのホームページでいくつかのステーションを比較して、
・うひょ!みんな経験10年以上…ベテランばっかりなのもちょっとな…
・ここは30代スタッフが多く在籍してる!自分と同じ年代の人が多いと働きやすいかも…
・ここは人がコロコロ変わってるみたいだからブラックなのか…?
などいろいろ想像しながら見てました(^^
ぜひ使ってみてくださいね!
自分でのリサーチが面倒、手っ取り早く情報収集したい。という場合は、転職サイトなどを利用するのも一つの手段です。
自分の希望条件とのギャップがないか確認する
働き始めて、こんなはずじゃなかった!ということがないように、希望条件と合致するか、
ギャップがある場合は妥協できる範囲なのか、自分の理想と照らし合わせてよく確認しましょう。
そして、
■事業所の見学
■管理者との面談
■同行訪問
対応してもらえるものはすべて参加しましょう!
まとめ
「ここで働いてみたい!」そんな訪問看護ステーションが見つかったら、自分がやりたい看護や理想の働き方が実現できそうか、ぜひ事業所見学や同行訪問に参加してみてください!
自分の目でしっかり確かめてから決めることが大切です。
あなたのナースlifeがキラキラと輝きますように。
訪問看護ステーション選びの参考にして頂けたら嬉しいです(^^)